もう一人の落合
プロ野球の落合選手をご存知でしょうか?「あの落合」ではなくて「落合英二」。
作新学院〜日大時代に活躍し、巨人入りを希望していました。しかしドラフトでは非情にも巨人からの指名はなく、彼を指名したのは、意中になかった中日でした。
当時テレビに出演して、インタビューを受けていた時の彼の失意の目を、今でも忘れられません。
でもそれだけで終わってしまっては、ドラマは生まれません。
彼は肘の故障もあって、入団後目立った成績を残せませんでした。
人生に「もしあの時・・・」などという仮定法は存在しませんが、それでももしあの時、巨人に指名されていたら、彼はどうなっていたでしょう。
故障続きの実績を残せない選手が、いつまでも座っていられるベンチは、巨人にはなかったはずです。
今シーズン彼は中日の貴重な中継ぎとして活躍しています。
ようやく「ピッチャー落合」のアナウンスに、歓声が上がるようになりました。
彼は今どんな思いで、その歓声を聞いているのでしょうか。
自分が投げた試合の後、聞くそうです。
「宣さんにセーブつきましたか?」「よかった!」
「野口が勝ち投手になったんで、ジュースおごってくれました。ちょっと安いですよね」そんな冗談が言えるのも、彼が充実している証拠。
勝ち星にもセーブポイントにもあまり関係のない中継ぎ。先発に勝ち星がついて、宣にセーブポイントがつけば、それで満足と言いきる彼。その目はきっと輝いているはずです。たとえヒーローインタビューを受けられなくても、そういう人生を選んで、そこに自分を見出している彼を、応援せずにはいられません。
「あの時」の失意があったからこそ、今輝いていられる。
だから人生はおもしろい。だからこそ人生は素晴らしい。そう思いませんか。
一年で鮮やかに咲く大輪の花もあるでしょう。何年もかかってようやく花開く蕾もあります。どんなふうに咲いてもいいのです、ようは力一杯、思いの限り咲けば。
|