お茶漬けは母の味 両親は、同じ村の貧しい農家に育った。 もっとも当時は3軒の大地主を除けば、みんな貧しい小作農家だったが・・・。 結婚後も貧しさに変わりはなく、それこそ爪に火を灯すようにして、二人で働いた。 二人とも働き者だったが、特に父は厳しい人で、ついていく母も随分苦労をしたのではないだろうか。 それでも気丈な母は、私が物心ついてからの記憶では、一度も弱音をはいたことはなかった。 食生活も質素なものだったし、炊飯器もジャーもない時代のこと、母はいつも冷ご飯をお茶漬けにして食べていた。 食事がすめばすぐ仕事に立ち上がる父について、ゆっくり食べている暇などなく、お茶漬けを流し込んでいたのだろう。 そんな習慣が染みついてしまったのか時代が変わって、もはや冷ご飯を食べなくなっても、母はいつもお茶漬けを食べていた。 お茶漬けを食べることで、苦しかった頃を思い出し、それを生きる糧にしていたのかもしれない。 お茶漬けを食べながら、時々母を思い出し胸が熱くなることがある。 「お茶漬けが好きだから・・・」 そう言って笑っていた母を・・・。 (2010.01.14) |