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とびらをひとつひとつ開くと
いつか見た風景がそこに広がる
時間がひといきに巻き戻され
記憶が息を吹きかえし動きだす

どこかで会っていた?
どこかですれちがっていた?
まるで同じ時をすごしたような
せつないなつかしさ...
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お茶漬けは母の味(2010.01.14)

お茶漬けを食べながら、時々母を思い出し胸が熱くなることがある。

枯れ松(2009.11.10)

老いた松の木を見るたびに、涙と汗にまみれた父の面影が浮かんでくる。

落ち葉の頃(2004.11.28)

神社の空からは、ときおり色づいた葉が飛んでくる。遠いあの日から届けられるように……。

名もなき星(2004.04.01)

岩本さんと出会ったのは、まだ夢を見ていた頃だった。

抱きしめられた記憶(2004.03.14)

もしかしたら厳しく背中を向けることで、父は私を抱きしめてくれていたのかもしれない。

一枚の写真(2004.01.04)

あれから何を手に入れただろう。何を失っただろう。捨ててしまった夢が、遠くで色あせている。

ガリ版(2003.08.29)

紙は普段のザラ紙ではなくて白い半紙だった。インクも黒ではなく青。軟らかい半紙にガリ版の青い文字。それは、それまで知らなかった教師の別の一面を見たようで、とても強烈に心に焼きついた。

記念写真(2003.03.29)

若くして伴侶を亡くし働くだけの一生に、はたして楽しいことなどあったのだろうか。 たった1枚の記念写真の祖母は、幼い私を後ろから包み込むように、凛として立っている。

隠岐の海(2002.12.01)

降り出した雨の中、傘もささずに手を振ってくれたやなさんを残し、船は西郷の港を出ていった。 港の影が雨に消える頃、私は荒れる波間にため息を一つ捨てた。

墨絵の街(2002.11.06)

屋上から見下ろした街は、まるで墨絵のように色彩がなく、霧の中にぼんやりと浮かんでいた。墨絵の街が少しずつ色を取り戻すのを、祈ることも忘れて見ていた。

甦る秋(2002.10.27)

白い灯台を見上げる岬の果てには、ウミネコの群が、経島の空を覆い尽くすように飛び交っていた。砕ける波に飛ぶウミネコは、空っぽの心に悲しく鳴いていた。

古い名刺(2002.10.02)

古い名刺を手にして、胸がチクリと痛んだ。私は父の何を知っていただろう。また知ろうともしなかった。

リンゴ飴(2002.08.11)

夏の宵、縁側に腰を下ろして風鈴の音を聞いていると、昔の仲間が誘いにやってくる気がする。

過去からの電話(2002.07.18)

この間病院のテレビを見ていると、CMでビートルズの曲が流れてきたんだ。笑うだろうけど、涙が出てきて・・・。そしたら何故か急に昔のことを思い出して、君に電話しようと思ったんだ。

姉を乗せたバス(2002.06.24)

母がため息のようにつぶやきながら見送ったバスの中で、姉は小さくなっていく母の姿を、どんな思いで見つめていたのだろう。

ハーモニカ(2002.06.24)

ハーモニカは、幼い心にはじめての別れの哀しさを教えるように、静かに響き渡った。私はいつの間にか、ハーモニカが好きではなくなっていた。

ほたる(2002.06.11)

飛びつかれたホタルのように、私の中に光を放って消えていったYさんは、永遠に消えることのない光を、手に入れたのだろうか。

古時計(2002.05.24)

何度もあのボーンという時計の音を聞いた。それは父からの合図のように、私にしか聞こえない音だった。

折り鶴(2002.04.25)

もしかしたら私は、あの時の折り鶴をずっと折っているのかもしれません。

遅れ桜(2002.04.08)

広げた掌に一枚また一枚舞い落ちる。そっと包み込めば、またしても思いは巡る。
あの時もこんな風に遅れ桜が散っていた。

仲間(2002.03.27)

あのときぼくらが宝物みたいに握っていたものは、何だったのだろう

夜の海(2002.03.22)

黙ってただぼーっとして、海の向こうが白んで行くのを眺めていると、私の中で何かが崩れていく音がした。

手紙(2002.03.19)

ボクの友達だった君が、あんなに輝いていた日のことを全部忘れて、どこかへ行ってしまったなんて。

落ち椿

子供たちがいなくなった神社には、今も椿が泣きながら落ちるのだろうか。

季節はずれの雛人形

そんな暮らしの中でも、何かを必死に守ろうとしていた、母のやさしさ 温かさが、強い意志を持って迫ってくる。

柿の実が色づけば

人は幸せだった頃の思いを記憶にしまって、歳を重ねていく。そしてその記憶を胸に秘めて逝くのだと思いたい。母は何を胸に逝ったのだろう。

カサブランカは咲いても

カサブランカが咲いたのは、初七日が過ぎてからだった。私は切ない思いでカサブランカの白い花を切った。

銀杏を拾って

熱い銀杏が口の中で、ほろ苦く広がる頃には、もう冬の囁きがそこまで聞こえている。

ひと夏の大阪−2

柳原さんの年齢になった今、あの頃ふと遠くを見るような目をしていた意味が、少しはわかる気がする。

ひと夏の大阪−1

今でも時々夏になると、走り去る電車の轟音の向こうに、若松さんの笑顔を思い出すことがある。

 

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