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クラスメイト

まさゆきとは、高校1年の時に同じクラスだった。
ぽっちゃりした童顔で、いつもにこにこして何の苦労もなく育ったような彼に、私は憧れにも似た親近感を覚えた。
特別な理由があったわけではないけれど、何故か気が合って、1学期が終わるころには、いつも行動を共にするようになっていた。
2年になり彼は理系を私は文系を選択したので、クラスは別々になったが、放課後は変わらず一緒に帰った。

卒業後も手紙や電話のやりとりは続いたし、年に数回ではあったが、出会って近況や将来の話などを交わした。
やがて彼は県の公務員に、私は一般企業(企業といっても個人の小さな法律事務所だったが)に就職した。
お互い忙しさもあって、二人の関係は少しずつ疎遠になっていった。
友人から彼が結婚したらしいことを知らされた頃には、電話番号も住所も教えてもらえない仲になっていた。
どうして私を拒絶するようになったのか、まさゆきに何があったのか。それからずっと腫瘍のように私の中に残った。

気まぐれに、ネットで名前を検索した。
何件かヒットした中に、県の情報のページがあった。そこには部長の肩書がついた旧友の名前が載っていた。それはまるで別人のように見えた。

部長の肩書を見て、ずっと心に引っかかっていたことが何となくわかったような気がした。
県のエリートコースを走っていくのに、何の役にも立たない高校のクラスメイトのことなんか、いつまでも構っていられなかったのだろう。
私にとってはたった一人の親友だったけれど、彼にはたくさんいるクラスメイトの一人に過ぎなかったのだ。
そして出世するためには、必要のないものはどんどん捨てて忘れてしまったのか。
彼はどれだけのものを犠牲にして、部長の役職を手に入れたのだろう。いや、彼なら何も犠牲にはしていないかもしれない。
パソコンの画面にあった名前は、もう私の知っているまさゆきではなかった。

それでもいつか、「遅くなってごめん」といいながらやってくるような気がする。いつものあの笑顔で。
私はそれを待っていようと思う。
まさゆきだって、放課後いつも体育館の影で、私を待っていてくれたのだから。
(09.06.29)

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