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千年藤 悠久の平安の空より垂れ下がるが如く

それは住宅地の一角にあった。

大歳(ださい)神社の境内の中央にある藤は、四方八方に枝を伸ばし、500平方メートルの境内を覆い尽くすように広がっている。
薄紫の房は、幾重にも下がり、藤棚の下に立って見あげれば、空は隙間からかすかに見えるだけだ。
あまり天気が良くなったのと平日だったので、観光客は幾分少なかったが、週末にはおそらくたくさんの人が訪れるのだろう。

兵庫県の天然記念物に指定されている「千年藤」は、平安時代に植えられたと伝えられている。
藤がこんなに巨木になるとは思ってもいなかったが、まさに千年の時を刻んできた自然の力に圧倒される。

平安の昔にこの地に藤を植えた人々は、はるか遠い未来に我々が感嘆と共に見上げることを予想しただろうか。
幾多の時代にたくさんの人々が、それぞれの思いで眺めた同じ藤の花を、千年の時を経て今見上げていることに、宇宙の不思議を感じてずにはおれなかった。

まるで悠久の遙か彼方から垂れ下がるかのような藤の下で、止まったような時の狭間にしばし佇んだ。

兵庫県宍粟市山崎町 大歳(ださい)神社「千年藤」 スライドショー
 

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