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あの頃の風

時の流れの中で風景が変わった
水の色も空の色も変わった
風の色だけがあの頃のまま

(黒井健画集「ハートランド」から)


画集「ハートランド」の”ビギニング”には、そんな言葉が添えられている。
ゆったりと流れる河の両岸は緑が茂っている。しろつめくさの花だろうか、所々に咲いている。水面は日を受けてきらめいている。遙か向こうには林を背にした家が疎らにかすんでいる。まるで時が止まったように、何もかもが穏やかにたたずんでいる。

草の上に寝ころんでいると、忘れていた遠い日が蘇ってくる。
風景も水も空も時の流れに押し流されていった。
でも一つだけ変わらないものがある。
「何かが壊れそうになったら、何かを失いそうになったら、ここに来てあの頃の風を感じて下さい」そんな言葉が聞こえてくる。
私は、あの頃の風の色を忘れていた。あの頃見えていた風の色が、見えなくなっていた。 久しぶりにそんな風に吹かれてみようと思う。(13.04.07)

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