おじいさんのけむり その1 ぼくの机の上に 500円玉1枚しか入っていないけれど、ぼくの大切なものが入っている。 なんで 4年生の夏休みのことだった。 宿題さえなかったら、夏休みは楽しいのにといつも思う。ドリルは友達のを写せばなんとかなるけれど、困るのは工作だ。4年生は きょうは作ろう、あすこそ作ろうと思っているうちに、夏休みは終わりになってしまった。 お父さんやお母さんにたのんでも、どうせおこられるに決まっている。困っていると、おじいさんが助けてくれた。 「そうか、学校ではそんなこともするのか。そんなら木で作るか?」 「うん、作る作る!」 ぼくはそばで見ていただけで、作ったのはおじいさんだった。 おじいさんは、木を切ったりけずったりして、コンコンコンと見ているまに、家の形をした 「ようけ(たくさん) おじいさんは、そういって500円玉を入れてくれた。コトンといい音がした。 ぼくはうれしくて、学校でみんなにじまんした。先生にもほめてもらった。 「じょうずに作ってもらったね。お父さんに作ってもらったの?」 「いいえ、おじいさんです。」 「おじいさんは器用なのね。」 「はい、昔 お母さんは「あほやな、そんなのほめてもらったのと違うやないの。」とおこった。 でもおじいさんは、とても喜んでくれた。 「それはよかった。ひろの先生は、ええ先生やのう。」 ぼくのお父さんは、りっぱな お父さんは景気が悪いといいながらも、おじいさんのいうとおり、 建前(家を建てるときに、建物の骨組みを作ること)の日は、とてもいい天気だった。お父さんの仕事仲間やしんせきの人が、おおぜい集まった。お父さんもはりきっていたけれど、一番はりきっていたのは、おじいさんだった。自分も仕事をするというのを、あぶないからとおかあさんが止めた。みんなが仕事をするそばで、家ができるのをうれしそうに見ていた。 あの頃は、おじいさんも元気だった。 |